惚れる競泳水着

・novelai作品・あらすじ:惚れる競泳水着高木涼太は●●の水泳部でエースとして活躍していた。スピードと技術に優れた彼は、いつもクールで、自信に満ちた態度で周囲の目を引いていた。しかし、そんな彼にはひとつだけ、誰にも言えない秘密があった。それは――水泳の試合前に特定の競泳水着を必ず着ること。その水着は、新品でも高機能な最新モデルでもなく、古びた紺色の競泳水着だった。初めて県大会で優勝したときから愛用しており、その勝利の感覚を思い出すために、彼はその水着を手放すことができなかった。だが最近では「さすがにそろそろ買い替えたほうがいいんじゃないか?」と部員たちからからかわれることも増えてきた。そんなある日の練習後、後輩の沢井彩花が涼太に声をかけてきた。「先輩、その水着、ずっと使ってるんですね。大事な思い出でもあるんですか?」涼太は驚きつつも、軽く笑って返した。「まあ、そんなところかな。変なこだわりってやつだよ。」しかし彩花は真剣な目で涼太を見つめた。「でも、それを着て泳いでる先輩、すごくかっこいいです。なんていうか、その水着が先輩らしさを引き出してる気がします。」思わぬ言葉に涼太は戸惑った。彩花はそのまま微笑みながら去っていったが、彼女の言葉は心に残った。数日後、地区大会が開催された。涼太は例の水着を手に取りながら、彩花の言葉を思い出していた。緊張が高まる試合前の控室で、水着を身に着けながら彼は深く息を吸った。「これで、また勝とう。」そして本番。彼は水面を切り裂くようなフォームで泳ぎ切り、見事な勝利を収めた。プールサイドに上がった彼に、観客席から彩花が手を振りながら叫んだ。「先輩!やっぱりその水着、最高ですね!」その後、涼太は控室で一人静かに水着を脱ぎながら、ふと別の思い出が頭をよぎった。あの水着を最初に買ったとき、一緒に選んでくれたのは金髪の少女だった。その少女、リナは涼太の幼なじみで、彼が水泳を始めたきっかけでもある存在だった。海外からの帰国子女だったリナは、日本語の発音に少し苦労していたが、その明るさと天真爛漫な性格でいつも周囲を笑顔にしていた。あの日、リナはこう言ったのだ。「涼太、その水着、すごく似合うよ!絶対速く泳げるって信じてる!」その言葉に励まされ、涼太は練習を重ねてきた。そして今でも、その水着を着るたびにリナの声が耳元に響く気がしていた。涼太は初めて気づいた。自分にとってただの縁起物だと思っていた水着が、他人にはもっと大きな意味を持つものに見えるのだと。それは彼の努力や情熱の象徴だったのだ。その日以来、涼太はその水着をさらに大事にしながら、後輩たちにこう話すようになった。「水着なんて道具だと思うかもしれないけど、自分が本当に惚れるものを使えば、きっと力になる。」そして彼は全国大会でもその水着で泳ぎ、彩花やリナへの感謝を胸に、さらなる伝説を刻んでいくのだった。

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